食品表示規制を一元化する法律(「食品表示法」について)
食品は私たちの生命や健康を維持する上で必要不可欠なものであるだけでなく日々の生活に彩りを与えてくれるものですが、その一方で体内に直接摂取するものであることから、食品が安全性を欠いていたりアレルギー物質を含んでいるような場合には、私たちの生命や健康に対する脅威ともなり得る危険もあります。それゆえ、食品の安全性等の確保や内容に関する適切な情報を得られるようにすることが重要であることは、言うまでもありません。
とはいえ、比較的容易にその品質や内容を外観から判断できる生鮮食料品についてはともかく、包装された加工食品については一般人が品質や内容を正確に知ることは必ずしも容易なことではありません。そこで食品については、現在、複数の法律により、景品表示法等による一般的な不適切な表示や情報提供に対する規制に加えて、食品の安全性確保上の観点(食品衛生法)や品質確保ないし向上の観点(JAS法)、さらには国民の健康増進に資する情報を提供するといった観点(健康増進法)から、食品の不適切な表示を規制するだけではなく一定の表示を義務づけて、食品の安全性等を高めるとともに、消費者が適切な食品を選択することが可能となるようにしています。
しかしながら、現在の食品表示制度は上記のとおり複数の法律がそれぞれの観点から規制を加える形となっているため、例えば、食品衛生法とJAS法の間には規制内容に重複がみられるほか、法律によって同一の事柄であるにもかかわらず用語の使われ方も異なっていたりするなど、消費者にとってはもちろん、表示義務を負う食品事業者にとっても複雑で分かりにくいものとなっています。これまでも、こういった規制の重複やズレは解消が試みられてきましたが、長らく所管省庁が異なっていたため完全な一元化には至っていませんでした。2010年に消費者行政を一元的に所管する消費者庁が発足したことに伴い、これらの食品表示に関わる法令の所管省庁も一元化されたことから、これらの食品表示規制を一元化する気運が高まり、様々な政府内での検討を経て、今年の通常国会で新しい「食品表示法」が成立しました。
この「食品表示法」では、食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保するため、食品衛生法、JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を統合して食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度を創設しています。具体的な規制内容については、今後、内閣総理大臣が策定する食品表示基準に委ねられますが、(1)名称、アレルゲン、保存の方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量、熱量、原産地その他食品関連事業者等が表示すべき事項や、(2)これらの事項を表示する際に食品関連事業者等が遵守すべき事項などが定められることになっており、食品事業者はもちろんのこと消費者においても引き続きその内容に注目が必要です。
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