平成24年 労働法改正
2013年1月 弁護士 黒栁 武史
平成24年度、労働法分野において多くの法改正が行われましたが、ここでは、労働契約法、高年齢者雇用安定法及び労働者派遣法の改正点について ご紹介いたします。
1 労働契約法の改正について
労働契約法が改正され、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)について、以下の規定が新設されました(下記1. 3.は、平成25年4月1日より施行)。
有期労働契約が反復更新され通算5年を越えた場合に、労働者が無期労働契約への転換を申し込めば、無期労働契約に転換するルール(同法 18条)。
有期労働契約の雇止に対する規制(同法19条)。
期間の定めがあることにより、無期契約労働者との間での不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルール(同法20条)。
上記2.は有期契約労働者の雇止に解雇権濫用法理を類推する旨のこれまでの判例法理を成文化したものですが、上記1. 3.は判例法理にもなかった新ルールです。
まず上記1.について、5年の通算契約期間の計算は、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象となります。また、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間(空白期間)が6ヶ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含められません。
また、上記3.の規制は、一切の労働条件に適用されます。労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、業務の内容と責任、職務内容と配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して判断されます。そして、不合理と判断された労働条件の定めは無効となります。また、無効とされた労働条件については、基本的に、無期契約労働者と同じ労働条件が認められると解されています(平成24年8月10日基発0810第2号)。
本改正を受けて、使用者としては、有期契約労働者の労働条件や雇用管理にこれまで以上に注意する必要があります。
2 高年齢者雇用安定法の改正について
高年齢者雇用安定法の改正により、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止されることとなりました(施行日平成25年4月1日)。
従前は、定年を65歳未満とする企業が、65歳までの継続雇用制度を導入する場合、労使協定に定める基準によって、対象者を限定することが可能でした。しかし、厚生年金(報酬比例部分)の支給開始年齢が65歳に引き上げられることに伴い、従来の制度のままでは、雇用も継続されず年金も受給できない者が生じるおそれがあることから、本改正に至ったものです。
なお、年金支給開始年齢の引き上げは、平成25年4月以降12年間のうちに段階的に行われます。その関係で、施行日から12年間は、年金の受給開始年齢に到達した以降の者を対象に、継続雇用制度の対象者を限定する基準を引き続き利用できる旨の経過措置が設けられています。
また、本改正において、継続雇用の受け皿を広げるため、継続雇用制度の対象となる者が雇用される企業の範囲が、グループ企業まで拡大されました。
そして、高齢者雇用確保措置義務の違反に対する行政勧告に従わない企業について、企業名を公表する制度が導入されることになりました。
3 労働者派遣法の改正について
労働者派遣法の改正により、派遣会社・派遣先に対し、新たに多くの規制が課されることとなりました。以下では、そのうちの幾つかについてご紹介します。
日雇派遣の原則禁止ー派遣労働者の雇用期間を30日以内とする日雇派遣は、原則禁止されることになりました。
グループ企業派遣の8割規制ー派遣会社がそのグループ企業に労働者を派遣できる割合が、全体の8割以下に制限されることとなりました。
離職後1年以内の者の元勤務先への派遣禁止ー派遣会社が離職後1年以内の者と労働契約を締結し、元の勤務先へ派遣することが禁止されることとなりました。また、元の勤務先が該当者を受け入れることも禁止されます。
労働契約申込みみなし制度の導入(平成27年10月1日より施行)ー派遣先が違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れている場合、違法状態が発生した時点で、派遣先が派遣労働者に対し直接雇用の申込みをしたとみなされることになりました。
その他、派遣会社に、関係者にマージン率や派遣料金等の情報提供や明示を行う義務、派遣労働者に雇用契約締結に際し待遇等を説明する義務などが課されることとなりました。また、派遣先に、派遣先の都合で派遣契約を解除した場合に一定の措置を講じる義務などが課されることとなりました。
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