譲渡制限株式の買取業者の株式譲受が無効と判断された判決について

法律コラム

譲渡制限株式の買取業者の株式譲受が無効と判断された判決について



弁護士 鷹野 俊司

 

1 総論

譲渡制限のある株式を少数株主から譲り受けて、これを会社等に買い取らせることを事業として行っている業者があります。これについて、大阪高等裁判所が、弁護士法違反を理由に株式譲受行為が無効になるという判決を出し(大阪高等裁判所令和6年7月12日判決)、これが最高裁でも維持されました。

 

2 弁護士法について

弁護士法72条は、法律に別段の定めがない限り、弁護士又は弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で一般の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを業として行うことを禁止しております。これは、弁護士資格もなく、何らの規律にも服しない者が、自らの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを放置すると、国民の法律生活の公正かつ円滑な営みが妨げられるため、そのような行為を禁止する趣旨の規定だと解されています(最高裁昭和46年7月14日判決)。

続く弁護士法73条では、「何人も、他人の権利を譲り受けて、……その権利の実行をすることを業とすることができない。」と定められています。この規定の趣旨も、主として弁護士でない者が、紛争を抱えている他人から権利の譲渡を受けることによって、みだりに訴訟を誘発したり、紛議を助長したりするほか、同法72条の禁上を潜脱する行為をして、国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずることを防止するところにあると解されています。他方で裁判所は、形式的に他人の権利を譲り受けてその権利の実行をすることを業とする行為であっても、上記のような弊害が生ずるおそれが認められず、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあると認められる場合は同法73条違反にならないとして、同条の例外を認めています(最高裁平成14年1月22日判決)。

弁護士法72条および同73条に違反する行為は、いずれも民事上無効になると解されています。

 

3 本件判決について

最初に触れた高裁判決は、少数株主から譲渡制限株式を譲り受けて、株式発行会社に対して譲渡承認請求を行い、裁判所に売買価格決定の申立をした事業者の行為は、形式的に弁護士法73条に該当するとしています。そのうえで、事業者の行為が社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとは認められないとして、同法違反を認定し、株式譲受行為を無効と判断しました。

判決が認定した事業者の実態は次のようなものです。

①事業者は、出版物を活用するなどして、主に発行会社側と売買価格の協議が調わなかった少数株主から相談を受け、その株式を譲り受けることを業として行っていた。②事業者は、購入する株式の実質価格を認識していたが、これを売主である少数株主に告げず、実質価格よりも相当程度低額で購入していた。③事業者は、発行会社との任意交渉又は売買価格決定手続において、実質価値に基づく権利行使をして、買取金額との差額を事業利益とすることを企図していた。④事業者が業として行っていた同様のケースのほとんどについて、発行会社の譲渡承認が得られず、発行会社または指定買取人に売却する方法で権利実行を行っていた。⑤事業者自身も、発行会社の株主のままだと投下資本の回収が困難となり、事業をビジネスモデルとして成り立たせることが厳しいということを認識しており、そのため、自身が発行会社にとって好ましからざる株主だということを示唆する行為を事業として行っていた、などというものです。

事業者は、譲渡承認がなされて株主となった他の複数の会社に対して、増配のために活動していくなどとして、株主代表訴訟を提起するなど複数の訴訟を提起しています。そして本件事案においても、株式を譲り受けた後、発行会社の経営者に対して度々面会を求め、経営に関する多数の資料の閲覧謄写請求を行うなどしております。本件判決は、当該事業者の業務実態やその行為の態様などから、これらは「自身が通常の同族会社にとっては株主として好ましからざる株主となるであろうことを示唆することにより、」発行会社が承認を差し控えることを企図した事業活動であったことが強く疑われると判断しています。

以上の認定のもとで、本件事業は、譲り受ける譲渡制限株式について、株主たる地位を取得するのではなく、その実質価格と取得価格との差額を事業利益とすることを主な事業目的として、主に発行会社側と売買価格の協議が調わない少数株主から株式を譲り受け、上記差額に相当する巨額の事業利益を上げることを目的とする事業であると判断しました。そして、このような事業活動として行われた株式の売買契約は、株式の売買価格に関する紛議を助長するものであり、国民の法律生活上の利益に対する弊害が生ずるおそれがないとはいえず、社会的経済的に正当な業務の範囲内にあるとは認められないから、弁護士法73条に違反して無効であると結論づけています。また、このような事業を放置すると、譲渡制限株式の株主が投下資本を回収する利益を保護するために設けられた売買価格決定手続の公正かつ円滑な営みは妨げられるとして、本件のような事業は、弁護士法72条本文の禁止を潜脱する行為に当たるというべきであるとも判断しました。

本件判決は、あくまでも当該事業者の事業実態に基づいて判断されたものであり、譲渡制限株式を買い取る事業がすべて弁護士法違反になるというものではありません。同じ業者が同一の行為を行った事案で、これを適法だとした判決も存在します。しかし、譲渡が制限されている株式の価格決定手続に介入して、本来は少数株主に帰属すべき株式売却益のかなりの部分を取得し、その利益を得るために株式発行会社に対して好ましからざる働きかけを行うようなことが業務として行われると、国民の社会経済上の利益は大きく損なわれるのではないかと解されます。

 

4 少数株主の保護について

他方で、閉鎖会社の少数株主となった者は、事実上経営から排除されたうえに、株式の売却も困難という状況に追い込まれやすいため、そのような株主の救済を図る必要性があることも指摘されております。このような少数株主の受け皿として、不適切な買取業者が増える可能性もあります。

この点について、事前の予防・解決策が、立法論を含めていろいろ示されてきたようです(江頭憲治郎著「続・会社法の基本問題」247頁以下)。例えば、各株主が事前に定款または株主間契約等をして、将来社内対立が生じても株主の経営参加が確保される措置を講じておくべきだというものもあります。またさらに進んで、立法論として、市場性を欠く株式の発行会社の株主に、無条件で株式買取請求権を付与すべきではないかとの議論もあるようですが、これに対しては、買取原資の調達の困難さから生じる発行会社の事業の不安定化を招くことや、株式評価の困難さ等を理由とする批判があるようです。

中小株式会社の経営の安定と、少数株主の利益保護の両面を考えた方策が求められると思います。