育児介護休業法の改正について
弁護士 宮崎 慎吾
1 はじめに
育児介護休業法が改正され、2025年4月以降、育児をしながら働く労働者への支援制度が拡充されます。これによって、事業主は、それらの制度を実施する義務が生じることになりますので、改正の内容を把握しておくことが必要です。
そこで、主な改正内容として、①子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、②育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、③介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の3点を紹介いたします。
2 育児にかかわる育児休業法の改正内容
まず、①について、事業主は、新たに働き方の柔軟化に関する措置を講じ、労働者がそれを選択して利用できるように周知、意向確認することが義務付けられます。働き方の柔軟化とは、例えば、短時間勤務や始業時刻の変更等、さらにテレワークによる勤務を可能とする等、働きながら子育てをしやすくするための措置を言います。これらの措置を講じ、対象となる労働者に対して個別に周知、意向確認を行うことが義務付けられることとなります。
また、現行法においては、一定の年齢に達するまでの子を養育する労働者について、事業主に対する請求によって残業が免除されることとされていますが、その対象となる労働者が、これまでの「3歳になるまでの子を養育する労働者」から、「小学校就学前の子を養育する労働者」に広がりました(改正法16条の8)。
加えて、子の看護休暇制度の対象も拡大しており、対象となる子が「小学校就学前の子」から「小学校3年生までの子」となりました。また、休暇取得事由に、「子の入学式、入園式や卒業式」「感染症に伴う学級閉鎖」が加わり、厳密な意味での看護以外の事由についても休暇が認められることとなりました(改正法16条の2,3)。これにより、これまでの「看護休暇」から「看護等休暇」へと名称が変更されました。
次に、②について、これまで常時雇用労働者数1000人超の事業主に義務付けられていた育児休暇取得状況の公表義務が、常時雇用労働者数300人超の授業主にまで拡大されます(改正法22条の2)。対象となった事業主は、育児休業等の取得割合あるいは育児休業等と育児目的休暇の取得割合を年度ごとに公表することが必要となります。
また、今回の育児介護休業法の改正と併せて次世代育成支援対策推進法も改正され、従業員数100人超の事業主に対して、育児休業の取得状況等にかかる状況把握および数値目標の設定が新たに義務付けられることになりました(12条3項)
3 介護にかかわる育児介護休業法の改正内容
次に、③について、事業主は、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た場合には、介護休業の制度や両立支援制度などにつき、個別の周知、意向確認を行うことが義務付けられ(改正法21条4項)、40歳に達した労働者などに対しても、これらの制度の情報提供を行うことが義務付けられます(同条5項)。
また、事業主は、介護休業の申出が円滑に行われるようにするために、研修の実施や相談体制の整備など、雇用環境整備の措置を講ずることが義務付けられます(改正法22条)。
次に、介護休暇の対象範囲も拡大され、これまで勤続6ヶ月未満の労働者を労使協定に基づいて取得対象外とすることができましたが、それができなくなります(改正法16条の6)。
また、事業主には、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が介護休業をしていない場合に、在宅勤務の措置を講ずることが新たに「努力義務」として課されます(改正法24条4項)。
4 おわりに
以上、簡単にですが育児介護休業法の改正について紹介いたしました。労働者の方にとっては、育児休業や介護休業がより取りやすくなります。他方で、事業主は、これらの措置を講ずる必要が出てきます。また、措置を講ずる前提として、就業規則等社内規程の改訂が必要になることも考えられます。どのような変更が必要かお悩みの際には、是非ご相談ください。