日本国際紛争解決センター(大阪)がグランキューブ大阪に移転しました!

法律コラム

日本国際紛争解決センター(大阪)がグランキューブ大阪に移転しました!



弁護士  豊島 ひろ江

 

2021年4月、日本国際紛争解決センター(大阪)(JIDRC-Osaka)の執務室は大阪中の之島合同庁舎から、グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)に移転しました。JIDRC-Osakaは、グランキューブ大阪をはじめ、大阪周辺の仲裁審問・調停実施に適した施設の紹介、JIDRCを通じた申込み、審問等実施にかかる各種支援サービスを提供しています。

 

JIDRCを利用する場面

JIDRCは、仲裁事件を管理・運営する仲裁機関(日本商事仲裁協会(JCAA)、国際商業会議所(ICC)など)ではなく、仲裁・調停・各種ADRなど裁判外の紛争のための審問等を行う「場所を提供する」施設です。国際仲裁の手続においては、裁判の証人尋問に相当する「審問(ヒアリング)」において、JIDRCが提供する「場所」を利用することになります。

 

仲裁手続の流れ

一般的な仲裁手続は、以下の流れとなります。

① 仲裁申立 紛争が生じた場合、一方当事者は、仲裁合意にもとづき、合意された仲裁機関があればそこに仲裁を申し立てます。

② 答弁書の提出・反対請求の申立 仲裁申立書に対して、相手方は答弁書を提出、場合によっては反対請求の申立を行います。

③ 仲裁人の選任(仲裁廷の成立) 仲裁では、裁判における判断権者である裁判官の代わりとなる仲裁人を当事者が選任します。当事者が合意できない場合には仲裁規則の定めにより仲裁機関が選任する場合もあります。

④ 手続準備会の開催 仲裁廷は成立後すみやかに電話会議・オンライン会議により、当事者・代理人らと協議し審理計画・予定を策定します。

⑤ 文書開示手続 当事者の求めにより、仲裁廷により、文書開示手続の実施が決定される場合もあります。

⑥ 当事者の主張書面・書証の提出 仲裁廷の定めたスケジュールに従い、当事者は主張書面・書証(陳述書や鑑定書を含む)の提出を行います。事案によりますが、提出回数としてはおよそ2往復、一定の準備期間が公平に与えられます。

⑦ 手続準備会の開催 当事者の主張と書証を前提に、仲裁廷は、改めて電話会議・オンライン会議により、当事者・代理人らと、審問前に協議をし、紛争の争点を確認したり、証人を決定して尋問の順番や時間等の審問の内容を決定したり、また審問場所としての会場や日時を確定するなど審問前の準備を行います。

⑧ 審問の開催(証人尋問等)手続準備会で決めたことを前提に、裁判と同様に証人尋問が実施されます。事件規模により数日から数週間にかけて集中的に行われます。この審問の場所として、JIDRCを利用することができます。

⑨ 仲裁判断 仲裁判断 審問後、証人尋問の結果等を踏まえて、仲裁廷により仲裁判断がなされます。作成された仲裁判断は当事者に送付(送達)され、任意の履行がない場合には仲裁判断の執行が検討されることになります。

 

「審問」場所の必要性

国際仲裁の手続においては、当事者・代理人・仲裁人が世界各国に居るため、時間的費用的にも物理的に集まることはなく、上述の①仲裁申立から⑥当事者の主張書面・書証の提出は、郵便やメールでやり取りされ、④と⑦の手続準備会は電話会議やオンライン会議で行われます。全員が一堂に会するのは「審問」(証人尋問等)が行われる場合に限られるのが通常です(もっとも近時のコロナ禍では審問自体もオンラインでの開催が常態化していることは前号で紹介したとおり)。

 

仲裁「審問」のために必要な会議室

具体的に仲裁審問のために必要となる会議室は、以下のおよそ4から5室となります。

① 仲裁審問を行うための部屋 当事者・代理人・仲裁廷・速記者・通訳人等が一堂に会して証人尋問を行う比較的大きめの会議室。

② 仲裁廷の控室 仲裁廷が審議をするための中小規模の会議室。

③ 申立人・相手方の控室 当事者と代理人が打合せ準備をするための中小規模の会議室。

④ 証人の控室 鑑定人など中立的な証人が準備をするための小規模な会議室。

 

JIDRC-Osakaの施設・利用料金

JIDRC-Osakaは、グランキューブ大阪をはじめ、大阪周辺の仲裁審問・調停実施に適した施設を審問場所として紹介しています。グランキューブ大阪においては、美しい楕円形の部屋に同時通訳ブースを備えた特別会議室や全室Wifi利用が可能な大中小様々な会議室が揃っており、原則として9時から21時の利用、土日祝日も対応可能となっています。

JIDRCを通じて、グランキューブ大阪を審問場所として利用する場合には、グランキューブ大阪所定の施設利用料金(室料、機器使用料を含む)に加えて、JIDRC-Osakaの事務手数料として4時間につき1万1000円(税込)の追加料金により、仲裁手続に精通したJIDRCのスタッフによる審問時やその前後の各種サポート業務、オンライン審問におけるWebカメラの貸出等のサービスの提供を受けることができます。

グランキューブ大阪の施設利用料およびJIDRC-Osakaの事務手数料は、国際的な同等の施設や日本のホテルや一般の会議室よりも廉価であり、コスト的にもメリットがあります。安価にJIDRC-Osakaのサポートを受けることが可能であり、日本国内(大阪)において初めて仲裁審問を開催する場合にも安心できます。詳細はホームページhttps://idrc.jp/をご参照ください。

 

仲裁を大阪で行うために

以上のように、大阪ではJIDRC-Osakaを通じて安価でかつ専門家のサポートを受けられる国際的な仲裁の審問を行うにふさわしい施設が用意されています。もっとも、そもそも仲裁の審問を大阪で行うためには、前号でもご紹介したとおり、事前に、紛争の相手方との間で紛争解決方法として、(特定の仲裁機関の仲裁手続を利用して)仲裁手続を「日本・大阪」で行うことについて仲裁合意があることが必要です。あるいは、仲裁手続を日本・大阪以外の場所(たとえば「日本・東京」「中国・北京」など)で行う仲裁合意であったとしても、事後的に、実際の「審問(証人尋問)」の場所を「日本・大阪」で行うことについて、当事者が合意し、仲裁廷が認めれば可能になります。

したがいまして、大阪で仲裁を行うには、まずは国際的な取引を行う場合には契約書にきちんと「日本・大阪で仲裁を行う」仲裁合意を定めることが大事です。また、仮に「日本・大阪」で合意ができなかったとしても、大阪に居住する日本人の当事者や証人が多い場合、大阪にはJIDRC-Osakaのような施設があることを理由に、仲裁手続が開始した後に、実際の審問を大阪で行うよう相手方や仲裁廷に働きかけをしてみればよいでしょう。