放置自転車の撤去について

法律コラム

放置自転車の撤去について



強制執行(放置自動車の撤去)

弁護士 宮崎 慎吾

 自分の所有地に、自動車が不法駐車されている、あるいは乗り捨てられている、というトラブルは少なくありません。

このような場合、ナンバープレート等から自動車の所有者を割り出し、連絡を取ることが出来るのであれば、所有者に撤去を求めるというのが基本的な解決方法だろうと思います。また、放置自動車が盗難車の場合、警察に盗難届が出ていれば、警察から本来の所有者の元に自動車を返してもらうことで解決することもあります。

しかしながら、所有者に撤去を求めても協力が得られない、あるいは連絡自体が取れない、というケースも少なくありません。このような場合、不法駐車だからといって勝手に自動車を処分すれば、後に所有者から損害賠償を請求される可能性もあります。そのようなリスクを回避しようとすれば、訴訟を提起し、強制執行によって自動車を撤去することになります。

訴訟を提起しようとする場合、まず相手方(自動車の所有者)に対して訴状を送達しなければなりません。住所さえ分かれば簡単なことのようですが、実際には、住民票上の住所に居住していない場合や、居住していても訴状の受取りを拒む場合などもあります。そのような場合は、どうして訴状が送達できないのかを調査し、裁判所に報告した上で、別の送達手段を考えなければなりません。しかし、たとえば「住民票上はそこに住所があるのに、そこに住んでいるのは別人であること」を調査しようとしても、こちらは相手方の顔も知らないことがほとんどですから、その家に出入りしているのが本人なのか、別人なのか、見ただけでは分かりません。そこで、近所の住民や管理人に聴き取りをするなどの手段で調査をすることになります。

送達が出来れば、裁判所で訴訟期日が開かれます。相手が出頭してくれれば、そこで和解によって車両を撤去してもらうことも可能ですが、相手が出てこなければ、欠席判決ということになります。

判決を得ることができれば、次に強制執行手続に入ります。

まず、車両を撤去するためには車両を動かさなければなりませんが、キーが無いことが多いため、移動手段を確保する必要があります。そして、場合によってはしばらくの間、車両を「財産」として保管しなければならないケースもあり、その場合には保管場所もこちらで準備します。たとえボロボロの車両であっても、「財産」として保管しなければならない以上、保管場所も、雨風を防ぐことができる屋根、壁があり、他人に盗まれないように鍵がかかる場所、というような条件が付され、駐車場であればどこでもいいというわけにはいきません。さらに、不法駐車車両は、税金の滞納があるケースも少なくありませんが、この場合、まず税金の納付先である市町村等と交渉し、同意を得なければ執行が出来ないというケースもあります。

以上のような手続を踏んで車両を処分すると、数ヶ月程度かかることが多く、また、費用も必要となります。

もちろん、かかった費用は自動車を放置した所有者が負担すべきものですが、費用の回収が困難なことも少なくありません。

自分の土地の上に勝手に置かれた物を撤去するのに、費用と時間がかかるのは納得がいかないところですが、後に理不尽な要求を受ける可能性を排除するために、強制執行手続を利用して撤去を実行するとなると、このような流れになります。

また、たとえば賃貸物件で賃借人が夜逃げをして家具等の荷物が放置されている、という状況でも同じような問題が起こります。もっとも賃貸借の場合には、不法駐車と異なり、賃貸借契約締結の際に、このようなことが起こりうる可能性を考えた契約内容(敷金等でカバーする等)にすることである程度予防をすることも可能です。

不法駐車に限らず、他人の物が放置されることで自分の土地が自由に使えなくなってしまうというようなトラブルは少なくありません。そのような場合、勝手に放置物を処分すると、後々思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。放置物を処分する前に、是非専門家にご相談下さい。