マイナンバー制度について

法律コラム

マイナンバー制度について



                          弁護士 幸尾 菜摘子

 

◯マイナンバー制度とは ”そもそも、どんな制度?”

平成27年10月よりマイナンバーの交付が始まり、平成28年1月より使用が始まります。

マイナンバーは、日本国内に住民登録を有する全ての者に一つずつ割り振られる番号で、社会保障・税務・災害時の行政サービスで統一的に使用される番号です。転居等に伴う行政手続の効率化等が期待されています。

 

◯マイナンバーの利用 ”誰が、いつ、利用する?”

マイナンバーは、様々な場面での使用が予定されています。

まず、従業員やその扶養家族はマイナンバーを雇用主に届け出て、従業員の健康保険や厚生年金の加入、給料からの源泉徴収の税務処理に使用してもらう必要があります。また、個人で証券を運用したり保険を契約している場合、自身のマイナンバーを証券会社や保険会社に届け出て、証券や保険の利金・配当金・保険金等の税務処理に使用しなければなりません。

このように、マイナンバーは、個人も事業主も関係する制度ですので、制度内容を確認しましょう。

 

◯マイナンバーの保護 ”個人情報が漏れるのでは?”

マイナンバー制度に関しては、個人情報が脅かされるのではないかという意見もあります。実際に、住民に統一のナンバーを振って管理するという制度については、昭和40年代から度々議論がなされてきましたが、個人情報保護の観点から導入には至らず、平成19年の年金記録漏れ問題等により導入の機運が高まり、この度導入されるに至りました。

マイナンバー制度は、個人情報を保護するため、様々な規定を設けています。具体的には、マイナンバーの使用範囲を法律で定められた行政サービスの範囲内に限り、使用状況のチェック体制や、範囲外での使用に対する罰則規定も設けられました。

裏を返せば、マイナンバーを使用する際は、法律で定められた範囲外で使用しないように十分注意する必要があります。

 

◯マイナンバーカード ”いつ、交付されるの?”

個人番号カードには、氏名・住所・生年月日・性別・マイナンバーが記載され、顔写真付きの身分証明書として使用することが可能です。

平成28年1月以降に、市役所へ申請すると、”個人番号カード”を取得することができます。

ちなみに、平成27年10月以降にお手元に届くカードは”通知カード”で、”個人番号カード”ではありません。個人番号カードを交付してもらうためには、ご自身で申請すると必要がありますので、ご注意ください。

 

◯法人番号 ”個人のマイナンバーと何が違うの?”

法人にも、法人番号が交付されます。

法人番号は、商号・所在地とともにインターネットで公表され、民間で自由に利用することができます。

 

◯マイナンバーQ&A

具体的に、注意すべき場面をQ&A形式でご紹介します。

Q1.どのようにして、従業員からマイナンバーを届け出てもらえばよいですか?

一般的には、次のような方法で、本人確認を行う必要があります(法16条)。ただ、身元確認は、社内に保管された過去に身元確認をした書類を使用することや、そもそも雇用関係にあることなどから本人に相違ないことが明らかに判断できると事業主が認めるときは、書類を省略しても構いません。

(通知カードしかない場合)

身元確認;①通知カード②パスポート又は運転免許証の2点

番号確認;①通知カード②マイナンバーが記載された住民票の2点

(個人番号カードがある場合)

身元確認と番号確認;①個人番号カード1点

Q2.マイナンバーは、毎年、従業員から届け出てもらわなければならないのでしょうか?

2回目以降の番号確認は、初回に確認した際に使用した書類と照合する方法でも可能です。

Q3.小規模の会社なので、大企業と同じレベルでマイナンバーを保管することなど出来ません。どのように管理すればよいでしょうか?

ガイドラインでは、従業員数が100人以下の会社について、”中小規模事業者”として、大企業よりも一段ゆるやかな管理方法が紹介されていますので、参考にしましょう。

http://www.ppc.go.jp/files/pdf/261211guideline2.pdf

Q4.マイナンバーの管理リスクに配慮して、マイナンバーの管理一切を他社に委託して、自社で直接マイナンバーにはタッチしない仕組みを作る予定です。委託する場合、委託先を監督しなければならないそうですが、具体的にどのように監督したらよいでしょうか。

①委託先の適切な選定(具体的な確認事項:委託先の設備、技術水準、従業者に対する監督・教育の状況、その他委託先の経営環境等)、②委託先に安全管理措置を遵守させるために必要な契約の締結、③委託先における特定個人情報の取扱状況の把握が求められます。

Q5.従業員の情報を効率的に管理できるよう、従業員から届け出てもらったマイナンバーを社内情報の統一管理番号としても利用したいのですが、マイナンバーの使用範囲との関係で支障はないでしょうか?

マイナンバーは法律で定められた範囲内でしか使用できません。人事などの社内情報の管理に利用すると、法律の範囲外で使用したことになってしまいますので控えましょう。

Q6.マイナンバーをガイドラインに沿って管理していたのに、従業員の過失で外部に漏れてしまった場合、罰則が課されてしまうのでしょうか。

マイナンバー法では、正当な理由なく第三者に提供した場合に4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または懲役・罰金の両方が課される等の規定があります。

過失は罰則の対象とはならないと解釈されています。ただ、本当に過失なのか、故意に提供したのではないのか、という立証の問題は残り得ます。

なお、従業員だけでなく、会社も両罰規定の対象となる(従業員とともに罰金を課される)こともあるため、日頃から従業員管理を行うなどして注意しましょう(法77条)

Q7.レンタルビデオ店で身分証明書として個人番号カードを提示したら、レンタルビデオ店がマイナンバーを取得したことになってしまい、使用範囲を越えてしまうのではないでしょうか?

個人番号カードの表面には、氏名・住所・性別・生年月日が記載されますが、マイナンバーは記載されません(裏面に記載されます)。提示する際は表面を提示し、裏面のマイナンバーをメモにとったり、裏面のコピーをとられないようにしましょう(法15条参照)。

Q8.取引先の法人番号を債権回収に活用できますか?

法人番号・商号・所在地の”基本3情報”はインターネットで公表され、これらを記録したデータもダウンロード可能ですので、一般的には市場調査の基本データに用いるなどの利用方法が考えられています。ただし、商業登記簿謄本の記載の一部ですので、債権回収への活用は期待できないと思われます。