会社法の改正について

法律コラム

会社法の改正について



2015年1月 法テラス徳島法律事務所 弁護士
(弊事務所元法テラス常勤弁護士)谷口 英一

内外の投資家の日本企業に対する信頼を高め、投資を促進し、日本経済の成長をもたらすため、会社法が一部改正されました。施行は平成27年5月1日からの予定となっています。改正点は多岐に渡りますが、以下では、平成26年改正での主な改正点についてご紹介します。

1 コーポレート・ガバナンスの強化に関する改正

(1)監査等委員会設置会社(改正法2条11号の2)

監査等委員会設置会社では、監査役・指名委員会・報酬委員会を置かず、社外取締役が過半数を占める監査等委員会が監査等を行います。

業務執行をしない社外取締役を複数活用することで、業務執行と監督の分離を図りつつ、社外取締役が監査を行い、経営者の選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を強化することを目的としています。

(2)社外役員の範囲の見直し

ア 要件の厳格化

改正法では、社外取締役は、親会社等又はその取締役、執行役、支配人その他の使用人でない者、親会社等の子会社等(兄弟会社)の業務執行取締役でない者、株式会社の取締役、執行役、支配人その他の重要な使用人又は親会社等の配偶者又は2親等以内の親族でない者をいうことになりました(改正法2条15号ハ、二、ホ)。

また、社外監査役についても同様に要件が厳格化されました(改正法2条16号ハ、二、ホ)。そのため、親会社の関係者を社外監査役としている会社は、今後は、社外監査役を見直すことが必要になります。

イ 要件の緩和

社外取締役は、株式会社又はその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でない者かつ過去10年間に株式会社又はその子会社の業務執行取締役等になったことがない者(この期間に非業務執行取締役、監査役、会計参与になったことがある場合は、非業務執行取締役、監査役、会計参与への就任の前10年間業務執行取締役等でない者)をいうことになりました(改正法2条15号イ、ロ)。

社外監査役の要件についても、社外取締役と同様の改正がなされました(改正法2条16号イ、ロ)。

(3)社外取締役を置くことが相当でない理由の説明義務

監査役会設置会社(公開会社かつ大会社に限る)であって株式について有価証券報告書を提出しなければならない会社が社外取締役を置いていない場合には、取締役は、定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないことになりました(改正法327条の2)。

(4)内部統制システム(業務の適正を確保するための体制)の整備

現行法では、業務の適正を確保するための体制に関して、当該株式会社及び子会社からなる企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備については、法務省令に定められていましたが(現行法348条3項4号、施行規則98条1項5号)、改正法では、法律に規定されました(改正法348条3項4号)。

内容に変化はありませんが、法律に規定されたことにより、親会社取締役の子会社管理・監督責任を解釈上認めやすくなるという影響があるのではないかと予想されています。

(5)会計監査人の選解任等に関する規定

監査役設置会社における会計監査人の選任、解任、不再任に関して、株主総会に提出する議案の内容を決定することは、現行法では取締役の権限ですが、改正法では、監査役会(監査役会のない会社では監査役の過半数)の権限となりました(改正法344条)。

(6)公開会社における募集株式の割当て等の特則

現行法では、公開会社は、有利発行でない限り、定款に定められた範囲内で、取締役会決議によって募集株式の発行の決定ができ(現行法201条1項)、募集株式の割当てについても原則として取締役会で決定できます(現行法204条2項)。

しかし、支配株主が変動する場合には、公開会社の経営にも大きな影響を与える可能性があるので、このような場合には、既存の株主に情報開示し、株主の意思を問うことが望ましいと考えられます。

そこで改正法では、募集株式引受人が、議決権の過半数を有することとなる場合には、公開会社は既存株主に対して引受人についての情報を通知・公告しなければならず、総株主の議決権の10分の1以上の議決権を持つ株主が反対の通知を行った場合、株主総会の普通決議によることが必要となりました(改正法206条の2)。

新株予約権の発行についても同様の改正がなされました(改正法244条の2)。

(7)仮装払込みによる募集株式の発行等

現行法では、出資の履行が仮装された場合に、仮装した引受人や関与した取締役等に責任を追及するための規定はありませんが、改正法では、払込みが仮装された場合に、引受人に対して、全額を払い込む義務を負わせ(改正法213条の2)、また、仮装払込に関与した取締役にも払込義務を負わせました(改正法213条の3)。

(8)新株予約権無償割当ての効力の発生等

新株予約権無償割当てにおける割当通知は、現行法では、新株予約権を行使することができる期間の2週間前までに通知しなければならないとされていますが(現行法279条2項)、改正法では、新株予約権無償割当てが効力を生ずる日後遅滞なくされなければならず(改正法279条2項)、新株予約権の行使期間の末日が当該通知の日から2週間を経過する日の前に到来するときは、当該行使期間は、当該通知の日から2週間を経過する日まで延長されたものとみなすとされました(改正法279条3項)。

2 親子会社に関する規律の整備に関する改正

(1)親会社株主の保護に関する規定

ア 多重代表訴訟制度

現行法では、株式会社の株主は、株式会社の子会社の取締役等に対して代表訴訟を提起することができませんが、持株会社等の企業集団においては子会社の企業価値は親会社の企業価値に大きな影響を与えることがあるという観点から、親会社株主が一定の要件のもとで、子会社の取締役等の責任を追求できることとされました。

改正法では、6ヶ月前から引き続き株式会社の最終完全親会社等の総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主または発行済株式の100分の1以上を有する株主は、※特定責任にかかる責任追及等の訴えの提起を請求することができ、当該株式会社が60日以内に訴えを提起しないときは、請求をした株主は、特定責任追及の訴えを提起することができることとなりました(改正法847条の3第1項、7項)。
※特定責任
取締役等の責任の原因となった事実が生じた日において最終完全親会社等およびその完全子会社等における当該株式会社の帳簿価額が当該最終完全親会社等の総資産の5分の1を超える場合における当該取締役等の責任をいいます(改正法847条の3第4項)

イ 株式交換等によって当該株式会社の株主でなくなった場合でも、当該株式交換等によって、当該株式会社等の完全親会社の株式を取得したときは、当該株主は、一定の要件のもとで、もともと株式を保有していた当該株式会社の取締役等に対し、責任追及等の訴えを提起することができることとなりました(改正法847条の2)。

ウ 一定の子会社の株式等の譲渡については、株主総会決議による承認が必要となりました(改正法467条1項2号の2)。

(2)キャッシュアウトに関する規定

ア 株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する株主(特別支配株主)は、当該株式会社の株主総会決議によることなく、他の株主全員に対し、その株式の全部を売り渡すことを請求することができる制度が創設されました(改正法179条等)。

イ 全部取得条項付種類株式については、キャッシュアウトのために用いられることが多いため、組織再編と同程度に株主への情報開示が必要であるとの観点から、事前開示(備置、閲覧、改正法171条の2)、事後開示(備置、閲覧、改正法173条の2)、差止請求(改正法171条の3)の手続が設けられました。

ウ 株式併合において、端数となる株主の利益を保護する観点から、一定の株式の併合について、事前開示(改正法182条の2)、事後開示(改正法182条の6)、差止請求(改正法182条の3)、反対株主による株式買取請求(改正法182条の4)の手続が設けられました。

(3)組織再編における株式買取請求等に関する規定

ア 吸収分割株式会社、吸収合併存続株式会社に対する株式買取請求で、株式買取の効力が生ずる時を、現行法の代金支払い時から、組織再編等の効力発生日に改められました(改正法786条5項、798条5項)。

イ 株式買取請求をした株主に対して、会社は、株式の価格の決定がされる前に、公正な価格と認める額を支払うことができることとされました(改正法786条5項)。

ウ 吸収合併存続株式会社等において簡易組織再編等の要件を満たす場合には、吸収合併存続株式会社の株主は、株式買取請求権を有しないこととなりました(改正法797条ただし書)。

(4)組織再編等の差止請求に関する規定

略式組織再編以外の組織再編について、簡易組織再編を除き、当該組織再編が法令または定款に違反する場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、その差止を請求することができることとなりました(改正法784条の2)。

(5)会社分割等における債権者の保護に関する規定

ア 分割会社が承継会社に承継されない債務の債権者を害することを知って会社分割をした場合には、残存債権者は、承継会社に対して、承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求することができることとなりました(改正法759条4項)。

イ 分割会社に知れているかどうかにかかわらず、会社分割に異議を述べることができる債権者であって、格別の催告を受けなかったものは、分割契約の内容にかかわらず、分割会社および承継会社双方に対して、債務の履行を請求することができることとなりました(改正法759条2項、3項)。

3 その他の改正

(1)株主名簿の閲覧等の請求の拒絶事由から、請求者が株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営んでいることという要件が削除されました(現行法125条3項3号)。

(2)監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある場合には、その旨についても登記を要することとなりました(改正法911条3項17号イ)。

(3)株式の併合においても、公開会社の発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えることができないという規律を及ぼすこととなりました(改正法180条2項4号、3項)

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