「音が、においが、商標登録可能に!?」

法律コラム

「音が、においが、商標登録可能に!?」



2014年1月 弁護士 長門 英悟

1 「商標」

「商標」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?グッチやルイヴィトンのマークや、自動車のエンブレムなどの文字・記号を思い浮かべる方が多いと思います。そんな商標についてですが、現在、商標法を抜本的に改正し、商標として保護する対象を「文字」や「記号」等だけではなく、「動き」、「音」、「色彩」などにも広げるための検討が進められています。

2 「商標」の対象

我が国の現行制度においては、「商標」の対象については「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」と規定(商標法第2条第1項)しているため、商標登録が可能なのは文字、図形、記号、立体形状に限られています。

  動き ホログラム 輪郭の無い色彩 位置 におい 触感
米国
欧州
韓国
日本

3 新しいタイプの商標

しかし、経済活動のグローバル化やインターネットの普及を受け、(1)言語の壁を越えたブランドイメージの発信、(2)海賊品対策としてのホログラムや非視覚的な商標の活用などの要請が高まり、従来の文字・図形の枠から脱却した新しいタイプの商標が世界的に広く用いられるようになってきています。そのような状況を踏まえ、海外においてはすでに下記のとおり「動き」、「音」、「におい」といった商標についても商標法の保護対象とする国が現れており、新しいタイプの商標の保護は国際的な流れになりつつあります。
日本の企業も、海外において、これら「新しい商標」について、すでに商標登録を行いつつあり、例えば、以下のような例がみられます。
・久光製薬の日本のCMでもおなじみの「ヒ・サ・ミ・ツ〜」という「音」の商標
・セブンイレブンのオレンジ色・緑色・赤色からなる三色の「色彩」の商標

4 今回の法改正に向けた動き

こうした国際的な流れに加え、TPPなどの自由貿易協定の締結に向けて参加国との統一的な知的財産ルールを設ける必要性が生じたことから、我が国においても「新しい商標」を適切に保護できるよう法整備が始まりました。それが今回の法改正に向けた動きです。まずは「動き」、「ホログラム」、「輪郭のない色彩」、「位置」及び「音」を新たに商標法の保護対象として、早ければ平成26年にも法改正が行われる見込みであり、また、「におい」や「触感」についても引き続き保護対象とすべきかについて検討が行われる模様です。

5 「動き」や「音」といった新しいタイプの商標

このように、我が国においても「動き」や「音」といった新しいタイプの商標が登録可能になるよう法整備が進められております。我が国の商標法については、原則として先に出願を行った者が商標登録できるという先願主義が採用されていますので、それぞれの企業においては、今のうちから法改正を見据えた自社のブランド戦略について検討しておく必要があるのではないでしょうか。

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