扶養義務と介護保険について
2013年8月 弁護士 幸尾 菜摘子
急速な高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者の増加と介護の重度化・長期化が問題となっています。そこで、家族の扶養義務と介護保険についてご紹介致します。
1 民法上の扶養義務
民法上、直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務があると定められています(民法877条1項)。また、夫婦も、互いに扶養する義務があります(同居協力扶助義務(同法752条)及び婚姻費用分担義務(同法760条))。
そして、扶養義務の内容は、扶養義務を負う者と要扶養者との関係によって、次の通り2種類に分かれます。
まず、夫婦が相互に対して負う扶養義務及び親が未成熟の子に対して負う扶養義務は、相手に自分と同程度の生活を維持させるべき義務(生活保持義務)と解釈されています。最後に残された一片の肉まで分け与えるべき義務とも言われています。
これに対し、その他の扶養義務者が負う扶養義務は、自分に余力がある限りで(自分の地位と生活とを犠牲にすることがない程度に)相手を援助すれば足りるという義務(生活扶助義務)と解釈されています。己れの腹を満たして後に余れるものを分かつべき義務とも言われています。
このように程度の差があるものの、高齢者が介護を要する状態に至った場合、親族は、介護をしたり、介護サービスの利用料を支払ったりする義務を一定程度負うこととなります。高齢化に伴い、介護が重度化・長期化する傾向にあり、扶養義務者の負担も相当増加することが考えられます。
2 介護保険における扶養義務の強化
しかし、介護保険制度を利用すれば、適切な介護サービスを低額で受けることができ、扶養義務者の負担も軽減できます。
具体的には、市町村に設置される介護認定審査会で要介護認定を受けた後、ケアプランナーに介護サービスの利用計画を作成してもらい、希望する介護サービスの種類や事業者を選択します。そして、介護サービスを受けるために、利用者本人が事業者と契約を締結します。なお、利用者本人の判断能力が不十分である場合、成年後見人を付して、利用者に代わって契約を締結してもらいます。また、介護保険制度を利用すれば、1割の自己負担額で介護サービスを受けることができます。
もっとも、介護保険は、対象者から徴収された保険料によって成り立っています。基本的には、対象者本人が納付義務を負いますが、65歳以上の対象者に関しては、配偶者や世帯主も連帯納付義務を負います(介護保険法132条)。
仮に、介護保険料を滞納すると、自己負担額が通常は1割のところ、3割、多いときには全額となってしまいます。近年、介護保険料の滞納が問題となっています。ご自身や家族の介護保険料が年金や給与から天引きされていない場合は、いざという場合に介護保険制度を最大限活用できるように、介護保険料の支払い状況を確認するようにしましょう。
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