特定商取引法の改正について

法律コラム

特定商取引法の改正について



2013年8月 弁護士 鍵谷 文子

近年、いわゆる「押し買い」に関するトラブルが増加していることを背景に、特定商取引に関する法律(特定商取引法)が一部改正され、平成25年2月21日から施行されています。以下では、今回の改正で新しく設けられた規制についてご紹介します。

1 「押し買い」

「押し買い」は、訪問業者が自宅などを訪問して貴金属等を強引に買い取っていく手法です。

改正前の特定商取引法では、消費者が物品の買主となる場合については規定がありましたが、消費者が物品の売主となる、いわゆる「押し買い」のケースに対応する規定が存在しなかったため、トラブルが急増していました。

2 特定商取引法の改正

(1) 今回改正された特定商取引法では、同法の規制対象となる取引類型に、「訪問購入」(購入業者が営業所等以外の場所において、売買契約の申込みを受け、又は売買契約を締結して行う物品の購入)が新たに加えられました。

(2) 「訪問購入」についての規制は、自動車や家具、書籍など政令で除外される一部の物品を除き、原則として、全ての物品についての取引が対象となります。

(3)「訪問購入」について、新たに設けられた規制の主な内容は以下のとおりです。

1.勧誘目的の明示(同法第58条の5)

購入業者は、勧誘に先立ち、事業者名や勧誘目的であることなどを明らかにしなければなりません。

2.不招請勧誘の禁止(同法第58条の6第1項)

購入業者は、訪問購入により物品を売買することについての勧誘を要請していない消費者に対して勧誘等をすることはできません。よって、いわゆる飛び込み勧誘は禁止されます。なお、消費者が物品の価格の査定を求めただけでは、「勧誘の要請」にはあたらず、購入業者が消費者から査定の依頼を受けても、査定を超えた勧誘はできないものとされています。

3.勧誘意思の確認義務(同法第58条の6第2項)

購入業者は、売主たる消費者からの要請を受けて訪問する場合であっても、消費者に勧誘を受ける意思があるかどうかを確認しなければ、売買契約の勧誘ができません。

4.再勧誘の禁止(同法第58条の6第3項)

売買契約を締結しないとの意思表示を行った消費者に対して、購入業者が再勧誘をすることは禁止されます。

5.書面交付義務(同法第58条の7、同第58条の8)

購入業者は、売買契約の締結にあたり、物品の種類、購入価格、物品の引渡方法、クーリング・オフに関する事項等について記載した書面を交付しなければなりません。

6.クーリング・オフ(同法第58条の14)

売主たる消費者は、⑤の書面を受領した日から8日以内であれば、書面により契約の申込みの撤回や契約の解除ができます。

7.物品の引渡しの拒絶(同法第58条の15)

売主たる消費者は、クーリング・オフが認められる8日間は、購入業者に対して物品の引渡しを拒むことができます。

8.クーリング・オフ期間内の第三者への物品の引渡しについての通知(同法第58条の11)

売主たる消費者が、クーリング・オフが認められる8日間の期間内に、購入業者が、買い取った物品を第三者に引き渡したときは、購入業者は、売主に対し、その旨を通知しなければなりません。
上記のほかに、購入業者が、不実告知やクーリング・オフの妨害をすることなども禁止されています。

3 特定商取引法に定められた各規制に違反した業者

なお、特定商取引法に定められた各規制に違反した業者は、行政処分(業務停止命令)や刑事罰の対象となります。

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