インターネット通信販売等に関するトラブルについて
弁護士 中本 隆久
新型コロナウイルスの感染拡大以降、外出自粛や在宅勤務等の増加に伴い、ネットショッピングの利用頻度が高まるとともに、インターネット通信販売や電子決済などのトラブルも増加しています。本記事では、これらのトラブルへの対応策等についてご紹介します。
1 インターネット通信販売
インターネット通信販売におけるトラブルとしては、受け取った商品に欠陥がある場合や、注文した商品は届いたが思っていたものとは違った場合などがあります。
まず、届いた商品に明らかな欠陥がある場合(例えば、消費期限の過ぎた飲食品や大きな破損がある商品など)には、販売者に対して代替物の引渡しや損害賠償などを請求することが考えられます(民法562条、563条、564条、572条など)。とはいえ、このように商品に明らかな欠陥があるようなケースはまれであると思われます。
むしろ、注文した商品に関して、新品だと思っていたら中古品だった、商品の展示画像には写っていなかった小さな傷や汚れがあった、画像で確認したものと色合いや質感などが違っていたなど、「思っていたものとは違う商品」が届くケースの方が現実問題として起こりやすいのではないでしょうか。
このような場合、購入者としては、まずは返品したいと考えるでしょうが、インターネット通販に関しては、特定商取引に関する法律において、クーリング・オフ規定が定められていないため、クーリング・オフ制度を利用して返品することはできません。もっとも、商品を購入すればすべてが返品できなくなるというわけではありません。
インターネット通販において、返品できるか否かは、販売者による返品特約(返品可能か否かの約定)の表示によって決まります。つまり、①インターネットの販売サイトや購入画面において、(販売者が)返品に対応しない旨の記載があれば、原則返品はできなくなります。他方で、②返品の期限及び条件等が記載されておれば、それらに従う限りは、返品可能となります。また、③そもそも返品特約の表示自体が存在しない場合には、商品を受け取った日を含めて8日間以内であれば、契約の解除及び返品をすることが可能とされています(特定商取引に関する法律第15条の3(ただし、返品の送料は原則として購入者負担となります))。
したがって、インターネットショッピングで商品を購入する際は、事前に返品の可否や返品・交換が可能な場合の条件などを必ず確認する必要があります。また、上記のとおり、返品を可能とする特約がある場合にも返品期限が設けられているのが通常ですので、商品が届いた際にはできるだけ早く届いた商品の確認を行うことをお勧めします(もっとも、返品条件として「商品未開封」などの条件を付した返品特約もあるので、特約内容と照らし合わせて、商品の確認方法もご検討いただければと思います)。
2 電子決済におけるトラブル
インターネットでの商品購入に伴い、クレジットカード決済、携帯電話料金との合算支払い(キャリア決済)、電子マネーの使用といった電子決済を利用することが増加しています。このような決済方法を悪用するために、昨今では、クレジットカード情報や電子マネーのIDやパスワードなどを騙して取得する詐欺行為が横行しています。その手口は年々巧妙化しており、「お客様のキャリア決済が不正利用されている可能性があるので、下記URLから確認をお願いいたします。」「未納料金が発生しています。本日中に下記までご連絡がない場合には法的手続に入ります。」といった内容のメール・SMSを送り付け、あたかも当該携帯キャリアやクレジットカード会社のものと思わせるサイト(本物のサイトをコピーして作成したフィッシングサイトなど)に誘導して、個人情報を騙し取るという方法が用いられています。
個人情報を盗み出して財産的な損害を発生させた者は、当然ながら詐欺罪・窃盗罪等の刑事上の処罰を受けうることはもちろん、民事上の損害賠償請求の対象ともなりえます。被害に遭ってしまった場合には、まずはクレジットカード会社や携帯会社等に伝えて、サービスを直ちに停止してもらい、警察や弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
もっとも、法的責任を負わせるにしても、まずは加害者を特定する必要があるところ、警察や弁護士等の手を借りたとしても犯人特定は容易いものではありません。まずは被害を未然に防ぐことが肝要であり、送り主不明のメールに記載されたURLにはアクセスしない(公式サイト・アプリからアクセスする)、IDやパスワードを無用に入力せずに企業などに事前に確認を取ることなど、基本的ではありますが、このような対応を行うことが非常に重要となります。