業務内容

HOME > 業務内容一覧渉外案件) > ASEAN入門

アセアン(ASEAN)法務入門

弁護士 三木 剛豊島 ひろ江朝倉 舞上田 倫史

弊事務所のアジア法務は中国が中心でしたが、「チャイナプラスワン」といった言葉に表されるように、近時、多くの日系企業が中国以外の東南アジア諸国に進出しており、東南アジアの新興国に関する相談が増えています。そこで、今回、弊事務所が扱った新興国の法実務をご紹介します。

日系企業が諸外国に進出する上では、まず、投資先の国における外国企業の投資に関する規制(外資規制)を確認する必要があります。業種によっては、自国産業の保護のため外資の参入自体が禁止されていたり、国内の企業とのジョイント(合弁)でなければ参入が認められないといった規制のある国もあります。同時に、外資の呼び込みのために魅力的な税務上の優遇措置を整えている国も多くあります。さらに、現地での事業に関連する行為全般については現地の法令が関係します。現地での土地の取得、オフィスや店舗等の物件の取得ないし賃借、従業員の雇用などにおいて、各種法令を正確に把握し、法令遵守に努めなければなりません。こうした外資規制や現地の法令の把握には、現地の弁護士の協力が非常に重要であり、弊事務所も協力弁護士と連携しています。

シンガポール マレーシア ベトナム インドネシア カンボジア フィリピン ミャンマー

  シンガポール マレーシア ベトナム インドネシア カンボジア フィリピン ミャンマー
首都 シンガポール クアラルンプール ハノイ ジャカルタ プノンペン マニラ ネーピードー
国土面積(km²) 716 33万 32万9241 189万 18.1万 29万9404 68万
人口(人) 540万 2933万 8970万 2億3800万 1470万 9401万 6367万
宗教 仏教、イスラム教など イスラム教61% 仏教、カトリックなど イスラム教88.1% 仏教 カトリック83% 仏教90%
実質成長率
(%)
1.3 5.6 4.9 6.2 6.0 6.8 5.0
1人あたり名目GDP
(米ドル)
52,051 9,890 1,523 3,563 933 2,612 834
関連する
法体系
イギリス イギリス フランス オランダ フランス アメリカ イギリス

(データは、外務省及びジェトロのホームページを参照しています。)

 

シンガポール

シンガポールは、他の東南アジア諸国に先駆 けて経済成長を遂げた国ですが、近時は東南アジアのビジネスを統括する拠点としてその重要性を高めてきています。

シンガポールは国土が狭く国内市場は限られていますが、(1)法人税等の税制上のメリットが大きいこと、(2)経済環境や法整備が進んでいること、(3)地理的にアジアの中心に位置していることなどから、シンガポールに持株会社や統括会社を設立して、当該シンガポール法人に、東南アジア諸国の各国現地法人を統括させるスキームを採用する企業は多いです。

また、シンガポールは、国際紛争解決センターとして注目されています。アジア各国の企業との間で紛争が生じた場合、当該国の裁判所が国際取引に十分通じていないことや、汚職等により自国の当事者を贔屓して外国当事者を不利に扱う等の懸念から、当該国以外の地での仲裁を選択することは有用です。シンガポールは、法整備が進んでいる上に、政策的にも仲裁に力を注ぎ、Maxwell Chambersといった国際的な仲裁センターがあるなど、中立的な第三国としてシンガポールが仲裁地として選ばれ、シンガポール国際仲裁センター(Singapore International Arbitration Center,通称SIAC)等が仲裁機関として選択されることは少なくなくありません。

マレーシア

マレーシアは、アジアの中でも、シンガポール と並んで、模範的な経済成長を遂げてきた国と言われています。これまでも、多くの日系企業がマレーシアに進出しており、日本は、2012年にはマレーシアにとって第1位の投資国となっているなど、日本とマレーシアは、ビジネス上、非常に強い結びつきがあります。

マレーシアでは、歴史的経緯から、マレー系住民を経済的に優遇する政策(ブミプトラ政策)が取られている点が一つの特徴であり、外国資本の出資比率は、従来は基本的に30%以内に制限されていました。近年は、このような規制の緩和が進み、製造業については外資100%での参入が原則可能となり、非製造業についても、外資が参入できる幅が広がってきています。

また、マレー人優遇政策(ブミプトラ)のために外国人雇用も制限を受けており、雇用主は外国人労働者を雇用することを目的として現地人従業員の雇用契約を解除することが禁止され、会社の従業員が削減される場合は、マレー人従業員を解雇する前に同程度の能力の外国人労働者を解雇するよう要請されているなど注意を要します。

ベトナム

ベトナムは、社会主義体制を基本としつつも、 積極的に市場の開放を進め、近年目覚ましい経済発展を遂げている国です。これまで製造業を中心に、多くの外国企業が進出しており、近年はサービス業の進出事例も増えています。

ベトナムにおいても、外国投資法を中心とした種々の外資規制に注意する必要があります。例えば、日本企業が現地法人を設立する際には投資証明書の取得が必要です。外国投資家が100%の子会社を設立するケース、外国投資家が国内投資家との合弁形態で非公開会社を設立する(国内企業の買収を含みます)ケースなど多くの場合、投資証明書を取得する必要があります。この投資証明書の取得にかかる手続きは、投資金額の多寡や投資分野によって異なり、取得までにかかる期間や必要となる提出書類等にも違いが出てきます。ベトナムでは、多くの法律が整備されていますが、法律それ自体が不明確な場合、実際の適用が不明確である場合、中央と地方とで運用の違いがある場合など、現地の弁護士に確認しても、現地法の内容や解釈について説明が異なることもあり、日本企業として方針の決定に苦慮するケースもあります。もっとも、現地の実力ある有力な弁護士に相談し、最善の対応を図るべきであることは他のアセアン諸国と同様です。

インドネシア

インドネシアは、世界第4位の人口を擁する(2011 年)上に、近年は中間層の拡大による国内市場の成長が著しく、生産・販売の両面から、外資企業の注目を受けている国といえます。

インドネシアの外資規制としては、投資全般を規律する投資法の他、具体的な外資比率等の規制を定めるネガティブリストが重要となります。ネガティブリストは、外資の参入自体が禁止される禁止業種と、外資の保有比率や事業形態等が制限される制限業種を定めています。この他、個別の法令が、特定の業種に対する外資規制を定めていることもあります。

不動産法制においては所有権、事業権、建築権など概念設定が独特であり、十分な事前の理解が必要です。

日本企業としては現地パートナーの有する開発許認可を前提としたビジネスを構築するケースもあり、現地パートナーの有する権利を正確に理解し、そのうえで交渉を行うことが重要となります。

さらに、国民の9割近くがイスラム教徒であるため、とりわけ雇用関係の法令に、特徴的な規定が見られます。例えば、従業員に対し十分な祈りの機会を与え、約1週間のレバラン(断食明け大祭)と呼ばれる休暇につき宗教祭日手当を支給する必要がある、などの労働法上の規制があることにも留意が必要です。

カンボジア

カンボジアは、東南アジア諸国の中でも、開発 が遅れていた国のひとつではありますが、近年は、政治的な安定化を背景に、積極的な外国企業誘致策を取っており、日本企業をはじめとする外国企業の進出例が増えています。

カンボジアには、外国人・外国法人の土地の所有を禁止する規制があります。日本企業が土地の所有を検討する際には現地パートナーがマジョリティーの現地法人を設立する必要があるため、現地パートナーとの株主間合意などに特に留意されるべきです。また、基本的に土地上の建物について独立の所有権を認めない法制であること、期間15年以上の賃貸借についての設定方法など日本法とは異なる不動産法制に留意されるべきです。

他方、投資が禁止、制限されている一部の分野(ネガティブリスト)を除いては、関連業務上の許可さえ得られれば、外資100%での投資も可能となっています。また、特に進出時に重要なこととして、一定の要件を満たす外国企業であれば、適格投資プロジェクト(QIP)としての申請・登録を経て、税制面などにおいて優遇措置を受けることができます。日本企業がカンボジアに進出する際には法務及び税務に加えて政治情勢なども考慮に入れ、事前に十分な準備をされるべきです。その際には現地の弁護士・会計事務所などの専門家に相談する必要があり、まず信頼できる専門家を探すことから始めるケースが多いので、日本企業の窓口となる日本の弁護士としても、カンボジア実務の経験が非常に重要となっています。

フィリピン

フィリピンは、アジアの中で最も経済成長率 が良い国と言われるほど、堅調な成長を続けてきました。日本の対フィリピン投資も盛んで、日本のフィリピンに対する投資額は、世界各国の外国資本による投資全体の約30%を占めています。

フィリピンには、外国投資法やネガティブリストといった、外国投資家による投資に関する規制があり、一定の事業分野については、非フィリピン市民(フィリピンの現地法人であっても、株式又は議決権の40%以上をフィリピン市民以外の者が保有していれば、「非フィリピン市民」に該当します)が保有できる株式又は議決権の割合が制限されています。また、このような外資規制を潜脱した外国人に対しては、Anti-DummylLawに基づき、懲役(5年以上15年以下)や罰金(規制を違反したことにより得られる利得が罰金額の基本となります)といった処罰がなされる可能性がある点で注意が必要です。

ミャンマー

ミャンマーは、長らく不安定な政治体制が続 いていましたが、近年民主化及び経済開放が進み、「アジア最後のフロンティア」として、昨今世界各国から投資先として大きな注目を集めています。外国投資家が続々と入国し、ホテル代やオフィス賃料の高騰、交通渋滞に悩まされている状態です。

外国投資家がミャンマーにおいて事業を行うためには、国内企業と同様、会社法上の営業許可を取得し、法人設立登記をすれば足ります。さらに、ミャンマーの外国投資法には、外国企業に対する法人税の減免や土地の長期的な使用が可能になるなどの優遇措置が定められており、これら外国投資法に基づく優遇措置を受けるには、前述の営業許可とは別に同法上の許可を投資委員会(Myanmar Investment Committee; 通称MIC)から得る必要があります。同許可を得る手続きにおいては、MICや関係省庁との事前折衝が不可欠です。進出業種によっては、運用および外国投資法等により外資の参入が認められていない業種(貿易業、流通業など)があることには注意を要します。また、外国人による不動産取得は禁止されています。

ミャンマーでは、一通りの法律は整備されているもののイギリス植民地時代に制定された古い法律もなお有効です。近代化・民主化に向けて多くの法律改正が急速に進められており、進出にあたっては、最新の法令や実務には特に注意が必要です。なお、ミャンマーは昨年ようやく外国仲裁判断の執行を認めるニューヨーク条約に加盟し、2013年7月15日より効力が生じています。国際紛争解決の手段として、国際仲裁が確保されたことは朗報といえます。

アジア法務担当チーム
三木 剛豊島 ひろ江大髙 友一黒栁 武史鍵谷 文子朝倉 舞上田 倫史幸尾 菜摘子

会社法

M&A

法律顧問(顧問弁護士)

企業法務

離婚・相続関係

交通事故

労働問題

個人破産・任意整理

民事一般

企業再生・倒産

渉外案件

知的財産権

不動産