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海外子会社等と取引する場合の税制 〜移転価格税制〜

2014年1月 弁護士 鍵谷 文子

1 移転価格税制とは

今日、企業活動の国際化の進展と企業の多国籍化に伴って、日本企業と海外のグループ企業との間の取引が頻繁に行われています。今回は、日本企業と海外のグループ企業等との間の取引で問題となり得る、「移転価格税制」についてご紹介します。

グループ間の取引においては、しばしば、グループ企業以外の者との取引で設定される対価とは異なる対価が設定される傾向にあります。その際、たとえば、海外の子会社に対する製品の販売(輸出)価格が低く設定されれば、海外子会社の利益は大きく、日本企業の利益は小さくなりますし、他方、海外の子会社に対する製品の販売(輸出)価格が高く設定されれば、海外子会社の利益は小さく、日本企業の利益は大きくなります。

このような取引価格の設定の結果、所得が海外に移転されているとみられる場合に、当該取引の価格を正常な価格に引き直して課税所得を算出し課税することで納税の不均衡を是正する税制が、移転価格税制です。

2 日本の移転価格税制の基本的な内容(租税特別措置法第66条の4)

(1)移転価格税制の適用対象者と対象取引

まず、移転価格税制の適用対象者は法人のみで、個人は対象となりません。
適用対象取引は、国外関連取引、すなわち、法人とその親会社・子会社などの国外関連者との間で行われる取引です。なお、法人が、非関連者を通じて国外関連者との取引を行う場合でも、一定の場合には国外関連取引とみなすこととされていますので、注意が必要です。

(2)移転価格税制が適用される場面

租税特別措置法第66条の4第1項は、「当該法人が当該国外関連者から支払を受ける対価の額が独立企業間価格に満たないとき、又は当該法人が当該国外関連者に支払う対価の額が独立企業間価格を超えるときは、・・・当該国外関連取引は、独立企業間価格で行われたものとみなす。」と規定しています。

すなわち、「独立企業間価格」よりも支払われる対価が小さい場合又は支払う対価が大きい場合に、法人は、当該国外関連取引については「独立企業間価格」で行われたものとみなして所得を算出し、申告を行わなければなりません。

そして、ここにいう「独立企業間価格」とは、同様の取引が第三者(非関連者)との間で通常の取引条件に従って行われた場合に成立すると認められる価格を指し、独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法等の算定方法のなかで最も適切な方法で算定されることとなっています。実務上は、この「独立企業間価格」の算定が問題となるケースが多く、近時、裁判でも多く争われているところです。

3 相互協議と事前確認

移転価格税制が適用されると、法人は、実際の取引価格と正常な対価と認定された金額との差額分について、日本と相手国の双方で課税されることとなり、国際的二重課税が生じます。

この問題について、当事者は、日本と相手国の税務当局において相互協議を行うよう申立てをすることができます。その結果、両国間で合意が成立した場合は、合意の内容に従って国内的な措置としての対応的調整が図られることにより、二重課税が是正されることになります。

また、移転価格税制に関する納税者の予測可能性を確保する手段として、納税者が事前に、独立企業間価格の算定方法等について税務当局に確認する、事前確認の制度が認められています。事前確認の段階で相手国との相互協議を行うよう求めることもでき、移転価格課税のリスク回避の観点からは、重要な制度になっているといえます。

4 不服申立て

移転価格税制に関して更正処分等を受けた場合、当該更正処分等に不服があれば、通常の場合と同様に、異議申立てや国税不服審判所に対する審査請求を経て、裁判所に、課税処分の取消訴訟等を提起することができます。また、これらの不服申立てと並行して、税務当局に対し、上記の相互協議の申立てを行うことも可能です。

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